後世へ届ける
いつの芸術も時代の影響を受けないものはないのでしょうが、今のコロナ禍での作品たちを見ると特にそのことを強く感じさせます。まるで神話で聞いた大鷲の黒い影が地球全体を覆っているかのようです。
この「MANGA DAY TO DAY」はコロナ禍での2020年4月1日からの日常を109組の漫画家たちが毎日リレー形式で描き繋いだものです。
ソーシャルディスタンスは人々を分断し、孤独にしましたが、隣人は決していなくなったわけではありません。
それぞれの場所でそれぞれの日常を懸命に生きているのです。
109通りの(コロナ禍とはいえ)何気ない日常生活はそのことを改めて教えてくれます。
もう、たまらなくなってカーテンを開けたとき、遠くに見える窓のカーテンもちょうど開いて誰かと頷き合うような、そんな些細な心強さがあります。
大御所のちばてつやや森川ジョージ、かつて私が愛読していたよしもとよしともや黒田硫黄も作品を寄せています。寡聞にして他の多くの漫画家たちを私は知りませんでしたが、(きっと若い)作家たちの瑞々しい感性に感動させられることが多かったです。彼らこそが希望ですね。
ただ、この上下巻が終わった後もこうした日々は変わらず、現在も続いています。
「後世へ届ける」というのがこの企画のテーマだったそうです。
コロナが治った未来に、懐かしむようにみんながこの日々を振り返ることができますように、そうした祈りにも似た作品たちでもあります。
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